【怖い話・怪談】学校の古い井戸から聞こえる不思議な声
幾多の時を経た学校の敷地奥に、忘れ去られた古井戸が存在する。
人々は誰も近寄らぬ。なぜなら、ある噂が囁かれているからだ。夜になると井戸の深淵から声が聞こえると――。
肌寒い風が吹くある夜、勇気ある（あるいは愚かな）生徒が井戸の声の謎を解明しようと決心した。
彼は同級生を誘い、学校の裏手へと向かった。彼らの耳に最初に飛び込んできたのは、寂しげな風の音だけだった。
しかし、日が落ち込むと共に事態は一変する。彼らは息を潜め、耳を傾ける。そこには疑いようのない、ほの暗い哀愁を帯びた女性の声が、微かながら聞こえている。
「助けて......水は冷たい......」その声は切実でありながら、どこか遠く、この世のものとは思えぬ響きを持っていた。
少年たちは恐れを抱きつつも、井戸の覗き込んだ。そこには何も映らず、ただ虚空が広がるばかり。
彼らはすぐにその場を離れようと決断。怖れを背負いながらも足早に校舎へと戻る。
翌朝、その話を聞いた老教師は、昔のことを思い出した。
学校建設前、この地はかつて水没事故で亡くなった女性の話で有名だったという。
井戸の声は彼女の恨みなのか、それともただの風の仕業なのか――真相は今もなお、謎に包まれている。
