【怖い話・怪談】鎌倉の腹切りやぐらに漂う無念の武士の呪縛霊
深い霧に包まれたある夜半、鎌倉の地に古びた櫓が佇む。このやぐら、かつては腹切り刑が行われた場所として知られ、その背後には悲壮な物語が隠されている。幾多の武士が主の命により、刃を腹に突き立て無念の最期を遂げた。夜風に乗り、悲鳴のような声が聞こえてくることもあるという。
石畳を歩めば、かすかな足音が響く。もしかしたらそれは、過去にこの地を去った武士たちの足取りかもしれない。月明かりの下、一筋の涙が光るような、そんな陰影が櫓の周りを覆っている。
語り継がれる言い伝えによれば、この地には未だに武士たちの霊が彷徨い、自らの哀しみを訪れる者に訴えかけるという。ふと空を見上げれば、雲間から覗く月が不安げな光を投げかけている。壮絶な最後を遂げた彼らの存在は、今宵も鎌倉の夜を静かに、しかし確かに支配している。
訪れる者は、やぐらの威圧感に圧倒され、そこに立つだけで肌を這いずるような寒気を感じることだろう。壁に刻まれた数々の傷跡は、かつて武士たちが抱えた絶望の深さを物語り、見る者の心をえぐる。
鎌倉の腹切りやぐらが今も静かに立つその場所は、ただの史跡に留まらず、強烈な怨念が渦巻く存在感を放っている。訪れた者は決して忘れられない体験をすることになり、腹切りの慟哭に包まれた櫓の物語は、深い霧とともに永遠に語り継がれていくのである。
