【怖い話・怪談】ある不動産を購入した人に襲いかかった恐怖の心霊現象

周囲には古びた木々が生い茂り、薄暗い林を通り抜ける道の先に、ぽつんとその家は建っていた。かつて賑わいを見せていたであろうこの一軒家は、いつの間にか人影も途絶え廃墟同然の風情で立ち尽くしている。購入した当事者は、古風な造りに一目惚れし、手を打つことに決めたのだが、付近の住民の間ではあまり口にされることのない、暗い噂が囁かれていた。

新たな住人が入り、家は改築され活気を取り戻しつつあったが、噂を知らずに越してきた彼らには、不穏な気配が漂っていた。真夜中に起こる物音、部屋の角を見つめる冷たい視線、そして寝苦しい夜に耳元で囁く声。誰もいないはずの屋根裏で鳴り響く小さな足音。全てが彼らの心理に徐々に影を落としていく。

始めは現実離れした出来事だと笑い飛ばしていた家族も、畳の一角に昼夜を問わず現れる湿った染み、鏡に浮かぶ不可解な人影に次第に恐怖を感じるようになる。何も映っていないはずの画面に映る静止した姿。閉じたはずの扉が知らぬ間に開く。家具揃えたばかりの部屋の角にはひっそりと老婆が座っているかのような残像が。

夜ごと強まるこの家の異変に、購入者は過去の住人が遺したものへの畏怖を募らせていった。地下室で見つかった古い日記には、先代の家族がこの家に封じ込められた恨み、愛する者を失った嘆き、憤怒が綴られており、増水した川が家を襲い家族が全員この世を去った悲劇。それが原因で蘇った怨念がこの家を取り巻く空気を濁し、新たな犠牲者を求めているかのように。

己を呑み込む恐怖の渦の中で、家族は次第にこの場所を離れる決意を固めていった。しかし、家を捨てて去ろうと決めたその夜、狂気じみた乾いた笑い声が家中に響き渡り、彼らは凍りついた。逃げ場はもはやなく、この家に取り憑く何かと対峙するしかない。真実が明らかになるその時まで、この家は静かなる恐怖を保ち続けることだろう。