【怖い話・怪談】宗教の勧誘を断った男性に起こった悲劇
ある夜、静かな住宅街を歩いていた男性は、見知らぬ女に声を掛けられた。
彼女は柔らかな笑顔を浮かべ、一見するとごく普通の若い女性に見えたが、その瞳の奥には奇妙な光が宿っていた。
彼女の話によると、男性こそが選ばれし人間であり、新たなる教義を学ぶべきだという。しかし紳士は丁重にその誘いを断り、家路を急いだ。
断った翌日、男性の元には奇怪な出来事が降りかかる。
玄関の郵便受けには異様に痩せ細った鳥の死骸、鏡にはくっきりと指で描かれた謎のシンボル。
それらが、何者かの嫌がらせであることは明らかだった。男性は恐怖に怯えながらも、その背後に宗教勧誘を行った女の姿を思い浮かべた。
夜はさらなる恐怖をもたらす。
エンジン音も無く、家の前をじっと見つめる黒い車の存在。寝静まった家の内部に聞こえる囁き声や軋む床の音。
男性は眠ることもままならず、あらゆる不安に怯える毎日を送るようになる。
やがて、彼の身にひどいアクシデントが発生する。
出勤途中の交通事故であり、一命は取り留めたものの重傷を負ってしまう。
安静を必要とする病院の病室では、夜な夜な見舞いに来る者がいた。言うまでもなく、勧誘を断った女性である。
「まだ、心を変える機会はありますよ」と彼女は微笑んで言葉を残し、消えた。
事件は終息することなく、男の心に深く根を下ろす。
宗教を断った代償が生涯続くのではないかという恐怖が、彼を静かに蝕んでいく…。