【怖い話・怪談】お墓で夜に鳴り響く赤ちゃんの鳴き声
深夜、お墓の静寂を破るかのように、赤ちゃんの泣き声が響き渡った。地元の住人は語る。それは新月の夜、墓地の一角から聴こえてくるという。最初は小さな泣き声。徐々に声は大きくなり、やがて深夜の静けさを裂く悲鳴へと変わる。
この現象には様々な噂が立つ。中には、かつてこの地で起きた悲劇の霊が未だに安らかな眠りにつけずにいると語る者も。過去の記録を調べれば、確かにこの墓地近くで赤ん坊を亡くした家族の話がある。しかし実際のところ、その声の出所について確たる証拠はどこにもない。
夜に訪れる勇敢な者たちは、泣き声を追って墓地を彷徨う。だが声は一向に近づくことなく、どこからか聞こえるだけ。逆に、近づこうとする足を無意識に遠ざけるよう、心は警告を発する。声がする方向へと進むほど、空気は冷たく、霧は濃くなる。
はたしてその声の正体は何なのか。科学的な根拠はあるのか、あるいは本当にこの世ならざる存在がいるのか。解明されないまま、恐怖の声は今夜も響くだろう。ただひとつ言えることは、この声を聞いた者は決して忘れることができないという事実だ。それは耳から心へと刻まれ、夢にまで現れるのだから。
