【怖い話・怪談】テレビを見続けた男に発症した恐ろしい奇怪な体験
長い休暇を前に、退屈を紛らわすためテレビを見続けることにした男がいた。昼夜を問わず、瞬きさえ忘れるほど画面に釘付けになるその男の周りで、やがて奇妙な出来事が起き始めた。
シンとした部屋の中、テレビの電源が自らの意志でオンオフを繰り返すようになったのだ。男はただそれを不思議がり、故障か何かだろうと考えた。だが、その夜、一層異様なことが発生した。テレビ画面に写る人物たちが、静かに、しかし確かに男を見つめ返し始めたのである。
「きっと疲れからくる錯覚だ」と自分に言い聞かせた男。しかしテレビを消しても消えないその視線は、彼の心の奥底に潜む恐怖をかき立てた。本当にただの錯覚なのか。次第に画面から漏れるささやきが耳に届き、男は明確に声を聞いた。まるで、呼びかけるかのように。
眠れぬ夜が続く内に、男の精神は蝕まれていった。そしてある朝、男は意識の片隅で、テレビの向こうから自分を引きずり込もうとする力を感じた。手足が冷たい何ものかによって、画面の中へと吸い込まれるのを。これが現実なのか、それともさらに深い何かの幻影なのか。
やがて男は自分が現実と虚構の狭間に閉じ込められていることに気付いた。頭を支配するのはテレビから聞こえてくる無数の声と、画面から溢れ出すようにねじ曲がった光景。こうしてテレビを見続けた男の日常は、恐怖に満ちた異界へと変わり果てたのだった。
