【怖い話・怪談】ロボトミー手術の恐怖
脳の深部に刃を突き立て、人格を根こそぎ奪う。その名もロボトミー手術。かつて実際に行われたこの処置は、現代から見れば恐怖の医療行為としか言いようがない。
患者は生きながらにして自我を失い、感情の泉が干上がってゆく。手術台の上では、医師が冷徹な判断のもと、脳を切り裂く。目覚めれば別人、いや、まるで人形のよう。かつて愛した人々の記憶さえも霧のように消えていく。途方に暮れる家族の胸中を思うと、背筋が凍るようだ。
顔色ひとつ変えぬ医師が、施術に呼応するかのように、機械的で無感動な動作で患者の眼窩にメスを差し込む。あるいは氷のピック、あるいは電気ドリル。脳を貫くたびに、肉体はけいれんし、その痛みや恐怖は想像を絶する。
かつて病は精神的なものと決めつけられ、理性では抗えない恐怖や狂気を内包していた。その病を断ち切るため、ある者は科学的治療としてロボトミー手術を行った。しかし、その結果は悲惨で、失われたのは病だけではなかった。人間そのものの尊厳と、本来持っていた感情、思考能力が氷解していったのだ。
ある夜、あなたが深い眠りにつくとき、頭蓋骨の内側で蠢く何かを感じ取るかもしれない。それは手術の記憶か、それとも深層心理が呼び起こす恐怖か。あなたの眼前には、決して忘れることのない光景が広がる。ロボトミー手術の残虐さは、ただの怪談では終わらせてはくれない。
今この時もどこかで、科学の名のもとに、計り知れない苦痛を伴う手術が行われているかもしれない。その痕跡は永遠に消えることはなく、狂気の深淵に沈みゆく無数の魂の叫びが、闇夜にこだまする。あなたの心の片隅に潜む、切り裂かれた脳の記憶が、今宵もまた儚く、しかし確かに、その存在を主張するのである。
