【怖い話・怪談】波照間島の古い一族の霊
波照間島、それは光が満ちる南の楽園。しかし、この美しい風景の陰で語り継がれる古くからの言い伝えが、訪れる者の背筋を凍らせる。
夜が訪れると、海の水面は黒くなり、島を取り囲む森からは奇妙な囁きが聞こえるという。かつてこの島に住んでいたとされる一族の霊が、なぜか夜ごとにうねりを上げる海に現れ、その憂いを訴えかける声が風に乗って聞こえるらしい。
漁師達の間では、海に取り残された霊を慰めるために編み出された特別な漁法が伝わっている。季節の変わり目に海へと網を投げ入れる習慣は、彼らが祈りを捧げ、壮大な海に命を吸い込まれた魂を鎮めるための秘儀であるともされる。
また、月夜の晩には島を巡る灯台から神秘的な光が漏れ、漆黒の海を照らす。だが、この光が霊たちを呼び起こす信号であると、恐れを込めて語る老人もいる。灯台の光が一番遠くまで届くその夜、島では誰もが静かに薄れゆく海の音を聞きながら眠る。
波照間島に伝わる言い伝えは、訪れる者にリアルな恐怖体験を提供する。語られる怪談は、ただの創作ではないかもしれない。そう信じる島民の目には、夜な夜な繰り返される不可解な出来事が、島の歴史と共に生き続ける真実の証だった。
