【怖い話・怪談】戦死者が眠る島に入った若者に対する恐怖の呪い

噂は古びた酒場の薄暗い角から聞こえてきた。戦死者が眠ると言われる無人島、その島に足を踏み入れた者には、言い伝えられる古の怨念がまとわりつくという。若者たちは半信半疑で島に向かい、幽玄かつ妖しい霧の中を進んだ。石碑に刻まれた文字は朽ち、墓標は風化し、すべてが歴史の闇に消えようとしていた。

彼らが島の深部へと足を進めるにつれ、耳につくのは囁きとも呻きともつかない声。足元でカサリと乾いた葉が音を立てるたび、何者かに見られている感覚に駆られる。空気は重く湿り、息苦しさに思わず喉が鳴る。

夜が訪れ、たき火の炎が静かに揺らいでいた時、ふと若者のひとりが行方不明になる。探し始めるものの、島は黒い霧で視界は阻まれ、手探りでしか進めぬ。その時だった。耳元でささやく声に、凍りつくような寒気が走る。若者たちは霊の怒りに晒されたのか、それともただの偶然なのか。しかし、彼らが島から脱出を試みた瞬間、金切り声のような叫びが夜を裂いた。

それからというもの、生き残った者たちは決して島の話を口にしない。彼らの表情に浮かぶは恐怖の色のみ。島に残された若者の命運や如何に、誰もその真実を知る者はいない。ただ、確かなのは、戦死者が眠る島は侵してはならない禁忌の地であり、そこには忌まわしい怨念が渦巻いているという事実だけだ。