【怖い話・怪談】ガムを噛んでいる少年が喉につまらせ死亡した恐怖の話

暗く湿った夜、ある少年がいつものようにガムを噛んでいた。無邪気な顔で泡を膨らませる楽しみにふける彼に、科学の授業で習った窒息の危険は遠い話のように思えた。しかし、その夜は何かが違っていた。不意の咳が少年を襲い、彼の喉に大きなガムの塊が詰まる。

途端に息苦しさが彼を覆い、必死に空気を求めたがガムは動かない。静まり返った部屋の中で、彼の呼吸は悲痛なほどの無音に変わり、四肢は冷たくなっていく。絶望感が彼を包み込む中、最後の力を振り絞り部屋の中を転げ回ったが、誰も助けには来ない。彼の時間は、ゆっくりと止まり始めていた。

最後はもはやガムを噛む楽しさなど忘れ去り、ただ自らの運命に抗うことのみが存在感を保つ。しかし、彼の努力は実らず、苦しみの中で静かなる死が少年を迎え入れた。この部屋での小さな営みは、永遠に封じ込められる。

彼がいた場所はいま、人々の足音もごく僅か。彼の逝去によって余計に重い沈黙が彼の命の終焉を物語っている。ガムの甘い香りが今も彼を想起させ、この部屋に訪れる者に深い哀悼の意を印象づける。まるで彼がまだその場に息づいているかのような錯覚に陥る者も少なくない。静寂のなかで彼の魂がまださまよっているのかもしれない。

この冷たい現実を前にして彼の死は警告となる。ふとした幸福の裏には、予測不可能な終末が潜むということを。ガムを噛むそれぞれのときに、少年の悲哀に思いを馳せるがよい。そして忘れてはならぬ、日常の片隅に潜む、唐突な死の恐怖を。