【怖い話・怪談】即身仏の修行を行った僧侶が体験した恐怖の出来事
古来より、即身成仏を目指す僧侶は厳しい修行に身を委ねてきた。しかし、その中でも特に畏れ多い実践が即身仏の修行である。生きながらにして仏となるこの秘法は、極限の苦行と深い信仰心を要求される。かの僧侶もまた、その道を歩む決意をしたのだった。
静寂に包まれた山奥、小さな石窟で滴る水の音が響く中、僧は自らの肉体を徐々に仏へと変えていく修行を始めた。ただ、肉体を捨てるこの過程で、僧侶は想像もしなかった恐怖に襲われる。
閉ざされた空間、徐々に衰退する身体、全てが絶望と不安を募らせる。ある夜、修行中の瞑想の最中、僧はいつもと異なる気配を感じた。不意に目を開けると、石窟の隅に人のような影がうごめいていた。身動き一つできずにいると、影は徐々にその姿を明らかにしていく。
その顔は、かつて修行に失敗し亡くなった僧のものであった。死んだはずの彼が、なぜここに？ちらつくろうそくの明かりの中で、その影は不気味に微笑みながら僧に語りかける。「お前もこのままでは我々の仲間入りだ」その言葉は骨の髄まで冷えるような恐怖を含んでいた。
無言のまま影は消え、僧侶は震え上がりながらも修行を続けた。だがその夜以来、僧は次第に心も体も蝕まれていくことになる。瞬きする度に現れる幻覚。自らの内側から聞こえる囁き。無形の何者かによる絶え間ない嫌がらせ。
千年の時を経ても語り継がれるこの話は、即身仏を目指す者への警告であり、修行の道の険しさと、その果てに待ち受ける未知の恐怖を示している。修行者たちは、他界への一歩手前でどんな絶望と向き合わなければならないのか、語り継がれる怖い話は彼らの心に深い影を落とすのだった。
