【怖い話・怪談】西成地区で人生のすべてを失った男の悪夢の悲劇

暗がりが包む西成地区の片隅に、ひっそりとうずくまる一軒の家がありました。わずかに灯る薄汚れたランプの下、男は今日も酔いに任せて愚痴をこぼしていました。かつては愛する家族と幸せに暮らしていた彼でしたが、仕事の失敗が命運を暗転させたのです。負の連鎖は断ち切れず、家族は彼を見限り姿を消したのでした。

奈落の底に落ちた男には、今は廃墟と化したこの家と、薄曇りの空を泳ぐハトしか友はいません。破れかぶれの日々と酒だけが、彼の孤独と絶望を紛らわせてくれる唯一の慰みでした。

ある晩、風が唸りを上げ窓を叩きつける中、男は床に伏し、いつもより深い眠りに落ちていました。まるで別次元へ誘われるかのような、そんな不穏な前兆が漂い始める中、突如、男は悪夢に飲み込まれました。

夢の中で彼が目にしたものは、壁に蠢く無数の影、天井から伸びる手、そして彼をじっと見下ろす無表情な顔たち。息が詰まるような恐怖に遭遇し、悲鳴を上げながら目を覚ました男は、しかし現実が夢の延長であることに気づかされました。その夜から、悪夢は現実と入り混じり、男に絶え間ない恐怖を与え続けるのでした。家の中の気配、壁の向こうから聞こえる囁き、すべてが男の精神を削ぎ落としていくのです。

最後に男の耳に届いたのは、家族の幸せだった頃の笑い声でした。しかし、それはもはや彼に届かない、遠く消え果てた過去の幻。夜が明ける頃、男はこの世から姿を消し、西成の廃墟に彼を知る者は誰もいなくなりました。今も語り継がれるこの怪談は、西成地区に確かな恐怖を植え付ける存在となっているのです。