【怖い話・心霊】黒瀬病院に現れる子供の恐怖の泣き声
黒瀬病院の廃墟は、長い間、地元でささやかれる恐怖の話の源だった。特に、病院内で聞こえる子供の泣き声は多くの人々を震え上がらせていた。
「本当に子供の泣き声が聞こえるのかな…」友人の疑問に対して、僕もまた好奇心と恐怖の狭間で揺れていた。
ある曇りがちな夜、僕たちは黒瀬病院の探索を決意する。病院の周囲は雑草が生い茂り、廃墟と化した建物は威圧感を放っていた。
「ここがその病院か…」友人の声が震えている。僕たちは病院の中へと足を踏み入れた。廊下は破損し、壁は剥がれ落ちていた。病院特有の消毒液の匂いはもうなく、代わりにカビと湿気の匂いが漂っている。
「ここ、本当に大丈夫か？」僕は友人に尋ねたが、返ってきたのはただのうなずきだけだった。僕たちは病院の奥へと進んでいく。
廊下を歩いていると、ふと遠くから子供の泣き声が聞こえてきた。「聞こえる？あれ…」と友人が言う。声は断続的で、まるで迷子になった子供のようだった。
僕たちは声のする方へと進んだ。廊下の突き当り、扉が半開きの部屋から声が聞こえてくる。部屋の中は暗く、何かがうごめいているように見えた。
「誰かいるのかな…」と僕が言うと、その瞬間、泣き声は突如として悲痛な叫び声に変わった。僕たちは恐怖に駆られ、その場から逃げ出すことにした。
しかし、逃げる道中、泣き声は僕たちを追いかけるように聞こえてきた。まるで、その声の持ち主が僕たちに何かを伝えたがっているかのようだった。
「早く、ここから出よう！」友人が叫ぶ。廃墟の出口へと急ぐ中、廊下の壁にかけられた古い写真が目に入った。それは、かつてこの病院で亡くなった子供たちの写真だった。
出口にたどり着き、外の空気を吸うと、ようやく安堵の息をつく。しかし、その安堵も束の間、泣き声は僕たちの耳にまだ残っていた。
後日、僕たちは地元の人々から聞いた。黒瀬病院では、かつて多くの子供たちが命を落としていたという。その子供たちの魂が、未だに病院内をさまよっているのかもしれない。
黒瀬病院での体験は、僕たちに深い恐怖を植え付けた。あの泣き声は、亡くなった子供たちの無念の叫びだったのかもしれないと考えると、背筋が凍る思いがした。
その夜以来、僕たちは何度も黒瀬病院のことを思い出す。あの泣き声は、ただの幽霊話では済まされない、深い悲しみと苦痛の表現だったのではないかと。
地元の話によると、病院は昔、重い病気を抱える子供たちの最後の希望の場所だったそうだ。しかし、治療が間に合わず、多くの子供たちが亡くなったという。あの泣き声は、その子供たちの魂が今もなお、救いを求めているのかもしれない。
「もしかしたら、あの子供たちは、誰かに自分たちの話を聞いてほしいのかもしれないね」と友人が言った時、僕は深く考え込んでしまった。あの病院には、まだ語られていない多くの物語があるのではないか。
僕たちは再び黒瀬病院を訪れる勇気はないが、あの場所には忘れ去られた子供たちの魂がまだ漂っている。彼らの未完の物語が、いつか誰かによって語られることを願っている。
黒瀬病院で聞こえた子供の泣き声は、僕たちにとって忘れられない記憶となった。あれは、過去の悲劇の残響であり、未だに解決されていない歴史の一部なのだ。
僕たちの訪問から数ヶ月後、病院の廃墟は取り壊されることになった。しかし、その場所には今もなお、多くの人々の心に残る深い哀しみと、忘れ去られた魂の叫びが響いている。黒瀬病院の子供たちの声は、僕たちに深い感慨を与え、生と死、そして忘れ去られた歴史の重要性を改めて考えさせられたのだった。
