【怖い話・怪談】毎年必ず溺れる人がいる死者に祟られた大きな沼
深く静かな森の中に存在する、その沼は「忘れ沼」と呼ばれている。不気味な静けさが支配するその場所に、一度足を踏み入れたものは皆、奇妙な感覚に駆られるという。
地元民の話によれば、昔、村の近くで起きた悲しい出来事が忘れ沼の呪いの始まりだった。ある年、若い男女が消え、その後、沼で溺れた遺体として発見されたのだ。以来、毎年夏が来ると必ずと言っていいほど、妙な事故や失踪が起こり、犠牲者が沼から引き上げられる。
沼は澄んでいるように見えて、その底は未だ誰にも知られず、たくさんの秘密を隠していると言われている。訪れる者には、まるで泥のような水が指の間をすり抜け、冷たさを伝えてくる。そこに触れるたびに、己が心が呪われるかのような恐れに襲われるだろう。
地元の人々は沼を避け、観光客にすら近寄らないよう警告する。しかし、その警告もむなしく、好奇心旺盛な者たちは未だに沼へと足を運ぶ。彼らが見ているのはただの水面ではなく、犠牲者の魂が渦巻く暗黒の底なのかもしれない。
忘れ沼のそばで聞こえるのは、時折、か細い叫び声か、はたまた死者の恨みか。誰もが認めたくはないが、この沼には確かに不吉な力が存在し、毎年、新たな犠牲者を求めているとされている。その呪いから逃れることは、一度その水面を覗き込めば、もう不可能かもしれないのだ。
