【怖い話・怪談】小さな子供を連れ去る八尺様の恐怖
山間の村に伝わる、忘れられない恐ろしい話がある。村人達が語る八尺様、それは夜な夜な子供たちを狙う不気味な存在。いつしかこの村の古老たちは、黒く長い髪をなびかせ、異様な高さの女が子供たちを連れ去るとささやいていた。
月が照らさず、星さえも霞む冬の夜、怯える子供の泣き声が哀れに響く。その夜、また一人の子が消えた。床に残された小さな足跡と、赤い糸のように伸びた手が暗闇を掻き分ける。八尺様の手だ。
朝になり霧が晴れ、村人たちは失くなった子を探し求めたが、悲しいかな、帰らぬ子の姿はどこにもなかった。ただ一つ怪しい足跡が、そこから森へと向かっていくのを見つけるに過ぎない。母親の叫び、父親の嘆きが村を覆った。だが八尺様に持っていかれた子が戻ってきた例は、誰も知らない。
村にはある言い伝えがある。八尺様が子供を狙う時、静かで暗い夜、遠くで聞こえる木魚の音に注意せよ。その音が聞こえたら遠くにいても、家に急ぎ帰り子供を守れ。だがその時既に遅し、八尺様が狙った獲物は逃れることはできないのだ。
誰もが恐れ、誰もが語る八尺様の怖さ、それはただの伝説では済まされず、現実の脅威として村に存在する。子供を守るため、夕暮れには急いで家路を辿り、一刻も早く夜の帳が降りる前に、子供たちを家の中へと招き入れる。夜の闇が深くなると共に、村人たちの動揺も増していく。八尺様の出現は予期せぬ時に起こり得る、そして次に狙われるのは自分の子かもしれないとの不安が、人々の心を重くするのである。
